有価証券とはどのようなものか

 小売業者Aが、問屋Bから仕入れた商品代金を決済するには、現金払いや売掛債権として処理してもらうほか、ふつう商品代金を手形金額とする約束手形を発行する方法があります。
 この手形を受け取ったBは、満期になるのを待ってAに呈示して手形金額の支払いを受けることも、また、取引先Cにこの手形を譲渡し、満期にAから支払いを受けさせることもできるし、さらに、B、Cはいずれも、この手形を金融機関に持ち込み、手形割引をうけて満期前にこれを現金化することもできます。
 このように、商品代金債権が約束手形という証券のかたちをとることによって、Aにとっては現金なしでの仕入れを可能とする信用供与的機能を果たし、Bにとっては、証券の移転という簡易な方法による債権譲渡、すなわち資金回収の途が開かれ、同時に後述するような支払性の確保がはかれるのであり、手形は、その利用者に大きな経済上の便益を与えるきわめて有用な制度です。
 約束手形は、金銭債権を表わす証券でありますが、このように、一定の財産上の権利を表章する証券を有価証券といいます。
 有価証券の起源は、おそらく紀元前二〇世紀に遡りうると思われますが、時代が下がり経済が発展するのにともない、取引社会においてめざましい発達をとげており、複雑化した現代社会は、もはや有価証券の存在をぬきにしては機能しえないところまできています。
 つぎに有価証券とはどのようなものかを明らかにするために、似て非なる証券のいくつかを挙げてみましょう。
 郵便切手・収入印紙・紙幣など、証券自体が法律上一定の価値を有するものとして扱われる証券(金券)。
 借用証書・売買契約書・物品または金銭の受領書・担保差入証など、事実ないし権利の存在を証明する証券(証拠証券)。
 銀行や郵便局の預金証書・携帯品預り札など、たとえ無権利者であっても、証券の所持人に対して行なわれた債務者の弁済は有効とされ、二重の弁済を免れさせる証券(免責証券)。
 金券は、財産上の権利を表章するにとどまらない点で有価証券と区別される。証拠証券・免責証券は、ともに、権利の発生・移転・行使にあたって証書が交付されることが通常ではあっても、必ずしもこれを必要とはしていません。
 この点で、これらを証券によって行ない、特有の法理が適用される有価証券とは異なる概念です。

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 有価証券は、財産上の権利を表章するものであるから、証券によって表章される権利によって、つぎのように分類することができます。

 (1) 債権を表章する有価証券
 手形・小切手・社債券・国庫債券は、金銭の給付請求権を喪章する有価証券である。
 貨物引換証・倉庫証券・船荷証券は、物品の引渡請求権を喪章する有価証券である。
 その他商品券・乗車券・劇場の切符なども、通常の場合は、一定の給付を請求しうる債権を表章する有価証券だよ考えられています。

 (2) 物権を表章する有価証券
 わが国には、物権のみを表章する有価証券は存在しません。しかし、抵当証券は、被担保債権と共に抵当権を表章するという形で、物権を表章している有価証券です。

 (3) 社員権を表章する有価証券
 一般に理解されているところによれば、一株券は、株主権(利益配当請求権など)という社員権を表章する有価証券です。
 このように、多様な有価証券が活用されていますが、取引社会の変化に応じて、今日、すでに、ほとんど利用されなくなっている証券がある一方で、新たに有価証券性が問題にされる証券が生まれています。預託会則ゴルフクラブの会員権証券は、預託会返還請求権とともにプレーする権利(施設利用権)をも表章する有価証券と見られています。
 また、原因関係からの影響の有無によっても、有価証券を分類することができます。ここでは、手形・小切手・株券がどの分類に属する証券かを示すにとどめます。
 手形・小切手は、証券上の権利が証券の作成によってはじめて生じる証券(設権証券)であるのに対し、株券は、既存の権利を表章するにすぎない証券(非設権証券)です。
 手形・小切手は、証券の効力が原因関係(その原因となった取引関係)によって影響を受けない証券(無因証券)です。冒頭の事例で、AB間の取引きが詐欺を理由に取り消されたとしても、Aの手形振出しは依然として有効です。株券は、この点で原因関係の影響を受ける証券(有因証券)です。
 手形・小切手は、また、証券上の権利の内容が、原因関係を離れて、証券の記載によって定まる性格の証券(文言証券)です。原因たるAの代金債務が一〇〇万円なのに、金額欄に二〇〇万円の記載をした手形を振り出せば、記載通りの権利が発生することになります。AがBに抗弁を対抗できるのは、これとは別の問題です。株券は、このような性格を有していません。

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