金銭貸借の成立

 現代の社会は、金融資本主義といわれるくらいで、多くの国、企業、人々が、より低利で、より長期にわたり、より多くの金を借りたいと望んでいます。この期待に多少ともこたえるため、各種の銀行、金融公庫、信用金庫、信用保証協会、金利調整機関(日銀政策委員会)等々があり、多くの法律があるわけですが、ここでは、もっぱら、金銭貸借の当事者の権利義務関係を中心に説明してゆくことにします。

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 まず金銭貸借は、土地、建物の貸借とちがい、借主が、借りたものを処分(消費)することができるわけで、この意味で消費貸借とよばれます。
 民法によると、金銭貸借は、借主が、一定額の金銭(たとえば五〇万円)の返還を約し、相手方から同額の「金銭を受取る」ことにより効力を生じるものとされています。「効力を生じる」というのは、借主が、約束どおり五〇万円を 支払う義務を負うということですが、つぎの諸点に留意する必要があります。
 実際の金銭貸借では、一定額の金銭の支払いを約し、同額の金銭を受け取る代りに、手形や小切手の交付を受けるのは、ごく、ふつうのことであり、その他の有価物が交付されることも少なくない。こうした場合も、金銭を受け取ったのと同じにみられ、したがって、借主は返還義務を負うわけですが、ときには、約定返還額相当の価値があるとして受領したのに、それだけの価値がない、といった事態がおきるこ ともあります。
 この場合は、ちょうど、隠れたキズのある物を代金あと払いの約束で高く買うのと等しいわけで、貸主はつぎの責任を負うことになります。
 そのキズが、隠れたもの、借主に即していえば、キズのあることを知らず、かつ、知らなかったことについて過失のないこと、であるときは、借主は、受領した物を返して約定金返還義務を免れることもできるし、キズのないものの交付を請求し、この請求に代え、またはこの請求とともに損害賠償を請求することもできる。これに対し、キズのあることを知りながら受け取った場合は、貸主が借主の窮迫につけいったという事情がないかがり、返還義務を免れないことになるでしょう。
 金銭を受け取ったのと同視し得る場合は、ほかにをあります。貸主が、借主の同意の下に、借主の旧債務や第三者の債務を弁済にあてたりした場合がそれです。さらに、売買代金その他の金銭債務を負っている者が、債権者と相談して、同額の借用金債務にきりかえる場合も同様ですが、このような合意により、金銭貸借が成立することについては、民法も、承認しており、これを、ふつう準消費貸借とよんでいます。
 借主が、一定額の金銭の返還を約するに当り、利息、弁済期、担保などに関する事項をも含めて契約書や公正証書が作られ、それには、しばしば「元本額を領収した」という記載がある、担保が抵当権であれば、その設定登記をすませ、しかるのちに金銭の授受が行なわれるのが通例です。
 そうすると、抵当権設定、公正証書作成当時は、返還債務はまだ生じていないことになり、返済に窮した借主は、苦しまぎれにこの点をとらえ、未発生の債権についてなされた抵当権設定は無効であるとか、事実と一致しない公正証書には執行力がないなどと主張し、裁判所も、かつては、公正証書に関して、その無効を認めたことがありました。
 しかし、今日では、このような主張は通用しません。なお、一定の金銭を貸し付けるという合意も無効なわけではありません。民法によると、それは消費貸借の予約で、貸し付ける義務が生じるものとされています。銀行、企業間では、しばしば基本融資契約を結び、それに基づいて、継続的に貸借が行なわれますが、このような基本融資契約まで、消費貸借の予約というのは、やや不自然なきらいがありますが、いずれにせよ、当事者の一方が破産したときは、貸付義務は失われてしまいます。

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