生活保護法による医療扶助を受けるには

最近の驚異的な物価上昇は、大多数の国民の生活を非常に厳しいものにしております。すなわち、消費者米価、健康保険料、公共料金のウナギ登りの値上げをはじめ、卸売物価、消費者物価は、最大の上昇ぶりを示しております。このような一般的なインフレ傾向による生活苦のほか、交通事故、労災職業病、公害等々による病気、怪我の多発、会社倒産、定年等による失業などなど、一般庶民の生活は、常に脅かされ続けています。
 そして、最近の日本は、政府の高度成長政策のため、国民の貧困、近代型貧困を生み出しており、これらは、いつ自分がまき込まれるかもわからないものとして、厳然と広範に存在しているのです。
 生活保護法は、このような本人には何の責任もないのに社会制度の歪みから否応なく押しつけられる生活苦から国民を救い、最低限度の文化的な生存を保障する目的で作られたものです。それは、何よりも資本主義体制における経済的弱者にも、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、すなわち人たるに値する生活を営む権利を有すると定めた日本国憲法第二五条の精神を実現するための法律として定められたわけです。
 生活保護法弟一条は、この法律の目的として、このことを掲げております。
 「この法律は、日本国憲法第二五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」
 生活保護制度は、既に述べたとおり、憲法第二五条の国民の生存権に基づく憲法上の権利行使です。従って、国からのお情けや恩恵として、「恵んでもらうもの」ではなく、堂々と「権利として」請求しうるものです。この生活保護の権利性が、現行生活保護法の大きな特色の一つです。

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生活保護法上の各種保護は、法の定める経済的条件さえあれば、その思想、信条、性別、年齢、階層、その他いっさいの差別なく支給を受けることができます。また、貧困の原因が、失業であれ、病気であれ、また犯罪者や酒乱であっても、差別なく支給されることになります。
 生活保護法は、憲法第二五条の生存権を具体的に保障するための法律ですから、人間らしく生活すること、すなわち健康で文化的な最低限度の生活をするために必要かつ充分な保護が与えられなければなりません。ただし、現在行なわれている生活保護行政、特に具体的な保護の内容を定める生活保護基準は、あまりにも低劣であって、とうてい、最低限度の生活を保障するに充分であるとは言えません。国民生活の最低限度の維持のため、現行の生活保護基準の少なくとも二倍への引き上げが必要であると言われております。
 生活保護法第四条第一項は「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力、その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用しうることを要件として行われる」と定めています。これは保護の補足性の原則と呼ばれるものです。
 たしかに、生活に困っていない人が、不正に保護を受けることのないようにすることは、必要なことかも知れませんが、現在の保護行政はこの補足性の原則、特に資産、能力の活用をあまりにも厳しく要求するため、ほとんどあらゆるものを売りつくさなければ保護を受けられないかの印象を与えており、従来から、あまりにも非人間的であるとして識者の非難を浴びております。
 また生活保護法第四条第二項は、補足性の原則の一例として、親兄弟、親類の民法上の扶養義務者から、扶養を受けられないときにはじめて保護を受けられるということを定めており、この点の運用についても、厳しい批判が集中しております。
 生活保護法第一〇条は「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる」と定めており、これを世帯単位の原則と呼んでおります。これは、たとえば世帯主が病気で収入がなく、子どもが就職していて一定の収入がある場合、子どもの収入を世帯としての収入として考慮する一方で、子どもの必要最低限度の生活費も、生活保護者と同一基準とみなすことを言います。つまり、全世帯員が、極めて低劣な生活保護基準による生活を押しつけられるわけです。
 ただし、それでは、あまりに実情にあわないので、例外的に世帯分離を行なって、被保護者とそれ以外の世帯員との生活程度、収入をまったく別個にするという方法が、とられることになっております。
 生活保護法は、第一一条第一項において、次のとおり七種類の保護の類型を設けております。すなわち、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助がそれです。この七種類の扶助は、保護を必要とする人の必要に応じて、その一種類だけを支給されることはもちろん、必要な扶助は何種類でも、同時に受給することができます。
 医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない人に対して、次の種類、診察、薬剤または治療材料、医学的処置、手術およびその他の治療ならびに施術、病院または診療所への収容、看護、移送の範囲内において行なわれます。また、この医療扶助は、健康保険による療養の給付とほとんど同一です。
 医療扶助は、生活扶助とは異なり、原則として現物給付によって行なわれます。特に、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、または医療保護施設か厚生労働大臣の指定する医療機関に委託して行なうことになります。ただし、現物給付によることが不可能なとき、または不適当なときには、金銭給付によって行なうことができることになっています。
 生活保護は、原則として、保護を受けようとする人が、福祉事務所に申請することによって始まります。法律上は、保護を必要な人が貧困のため急迫しているときは、職権で保護を開始できることになっておりますが、それはあくまでも例外ですから、保護を受けるには、本人、またはその扶養義務者、その他の親族が申請しなければなりません。申請のあった日から、一四日以内に、福祉事務所が支給の可否、支給する種類、内容、程度を通知することになっています。

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