親族の不動産利用の第三者の影響

親族間の不動産利用が当事者以外の第三者にとって利害関係を引き起すものとして考えられるものの中には、他人の土地家屋を賃借している者が親族に賃借物を転貸し或は賃借権を譲渡した場合、賃貸人が同意なき譲渡転貸として解約できるかの問題、更に家屋賃貸人が自己の親族の住居を得る為に賃貸契約を解約することが、自己使用としての解約の正当事由になるか否かの問題、親族に不動産を利用させているものが、当該不動産を売却し又は代物弁済するなど占有の権原を失った場合、親族は自己の使用権を以て新所有者に対抗出来るかの問題があります。特に問題となるものは、家屋を賃借しているものが、世帯を共にしない親族の住居をとも角確保してやる為にしばらくその借家を家主に無断で使用させる場合です。このような場合に、家主が承諾なき転貸として直ちに解約出来る、との結論が妥当でないことは明らかです。もちろんそれは、民法六一二条の無断譲渡転貸が解約事由となる、という規定自体がそもそも問題を持っています。

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無断譲渡転貸を理由とする解除権を抑制する方法として三つの手段が用いられています。即ち、一は無断譲渡転賃という構成要件を厳格に解し当該事実が無断にあたらぬとし又は転貸にあたらぬとすること、二は無断譲渡転貸が解約事由となる基礎を信頼関係の破壊に求めて、賃借人の行為が背信にあたらぬとすること、三は解除権の行使が権利の濫用、信義則違反、長期間の不行使による失効などの一般条項一般原則によって許されないとすることです。
事案に現われている所では、借家人が親族の居住難を助ける為に借家の一部をこれらの者に使用をさせている場合が多く、家主が無断転貸を理由に解約を求めています。従って、法律上争点となっている点は、当該行為が転貸にあたるかどうか、転貸にあたるとしてもそれが家主に対する背信行為になるか否か、が争いとなっており、権利濫用などの一般条項は賃借人から抗弁として主張されてはいますが、それだけで法的に処理を行なう判例は見当らず、むしろ借家紛争一般の判例に見られるように、転貸の成否や背信行為の有無が問題となっています。
例えば、転貸同居禁止の特約があっても借家人が姉の夫を住居が見つかるまで一時同居させたことは賃貸人の信頼を裏切ったものではなく解約の理由とならない、とした判例や、賃借人たる息子が母との不仲で家族と共に一時他へ引越し、老齢の母を世話する為に姉の夫一家族を家主に無断で借家に居住させた場合に、その居住は留守番とも見られ転貸とは断定し難く、転貸としても背信行為にあたらない、として家主の解約期渡請求を棄却した判例、実弟、妹婿のような親族関係あるものの同居は使用収益の範囲を超えたものでないとする判例、賃借人が家屋を住宅兼店舗として使用して来たが、商売上の都合で住宅を建てて移転し弟にその営業を手伝わせ借家に居住せしめ、後弟は結婚して世帯を別にしている場合でも、弟は営業を補助する地位で賃借人に附随して居住しているものと認めて転貸にあたらぬとした判例など、親族に対する借家の使用を認めています。
もっとも親族ばかりでなく、友人知人などを好意的に同居せしめた次案についても、特別な事情がある限り、転貸による解除を認めてはいません。例えば、縁故先から懇請されて引揚者と疎開者に間貸した場合解約を権利濫用とし隣人をその移転先の家屋が出来るまで無償で間貸したことは背信行為でないとし、又住居に困っている人を息子の家た教師として食費だけをもらって住込ませている場合は転貸にあたらないとするが如きです。
このような親族などという特殊関係の存在が、無断転貸による解約の効力を否認させる要素であるとは断定し得ないのであって、一時的なものであるとか、間借に過ぎないとか、留守番であるとか、の諸要素に附随した家主の解約を制限する一つの要素となっていると云うべきであり、それは、親族関係のもつ、潜在的な扶養機能が、表面に出て来た場合にのみ独立の要素として取上げられると見られるのです。従って、家主の同意を得て親族を同居させた場合でも、賃借人が転住して賃借権をその親族が完全に譲受けたと見られる場合には、無断譲渡として解除明渡か認められるのです。
家屋賃貸人が、契約違反を理由とすることなく賃貸借契約を解約するためには自己使用その他正当の事由あることを要するとされていますが、もし家主の親族が住居に困窮している場合には、自己使用に準じるものとして正当事由の判断に考慮されるでしょうか。この正当事由の判断に考慮される要素には多様のものがあり、自己使用の必要だけでは不充分であり、借家人側の住居事情その他一切の事情も考慮されねばならないとされるため、自己の親族の居住の必要という要素を切離して取出すことは出来ないのですが、少なくとも一つの要素となっていることが認められます。本乗家族としで同一世帯にあるべき者が、住居難のため別居を余儀なくされている場合には、正当事由たる自己使用の必要性ありとされることは、家族の機能から見て当然です。その他の親族については、その住居の必要と正当事由との関連については場合によって判断さるべきもののようであって一般的に断定し難く、一方借家人側の親族の同居事情は考慮されるべきであるとの判例があり、判例はむしろ現実の必要性を顧慮しているものと理解出来ます。
次に、親族が不動産を利用しているとき、利用させている者が、当該不動産につき、所有権を失い或は賃借権を失うなど、占有の権原を喪失した場合、その親族の利用関係はどのように扱われるかが問題になります。もともと同一世帯に属する親族の利用関係は、独立の占有使用関係がない以上不動産の所有者ないし借主たる家族の占有権原の得喪と運命を共にします。
又同一世帯に属しない親族の利用関係でも、それが賃借物の転借関係であれば原賃借権と運命を共にし、他方、直接の賃借関係であれば、対抗要件を具える限り新所有者に賃借権を以て対抗出来ることは一般原則通りです。従って問題になるのは親族間の使用貸借ないし使用貸借と類似する利用関係です。使用貸借が貸主と借主との待殊関係を基礎とし或はまったく恩恵として結ばれる以上、原則として、使用貸借関係は、その物件の移転に伴って移転しないと見るべきです。従って、親族という特殊関係に基づき、謝礼やお返しなどの給付がなされても、客観的に対価関係に立たない場合には、かかる利用関係は原則として第三者に対抗できません。例えば、親族に所有家屋を間貸し、親族が只というわけに行かないとして、自発的に月千円を支払っていた場合、その家屋が第三者に代物弁済として所有権移転がなされ、その新所有者が明渡請求をした事案に対し、裁判所は、そのような時価に対して著しく低額な支払金は賃料ではなく特殊関係に基づく謝礼に過ぎず、その使用関係は使用貸借に外ならぬため、新所有者は原所有者と親族間の使用関係を法律上承継するものではない、と判示して明渡請求を認めています。
反対に親族という特殊関係に基づくものであっても、利用の対個が支払われる場合には、所有者として賃貸借関係を承継した第三者は、対価が著しく均衝を失する場合でない限り原則としてその賃料の約定を承継し、その対価が定められた背後関係は捨象されます。例えば、家庭不和の調停で、同居している娘夫帰が扶養料の意味を含めて家屋所有者たる母に、使用部分の使用料として月額五千円を支払い母と円満に共同生活をすべき旨の調停が成立し、その後母がその家屋を第三者に譲渡したときは、その賃料の定めは額が過大でその承継が不合理でない限り譲受人に引きつがれ、新所有者から債務不履行による明渡請求は認められるのです。従って、対価と目すべきものが、性質上承継に適しないときは、利用関係が解消され別個に対価関係が約定され利用関係が設定されなけれぱなりません。

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