社宅使用の法律的性質

社宅の使用関係は有償であろうと否とにかかわらず性質上、借家法の適用なく、社宅規則がある時はそれが優先するという立場があります。これは借家法がもともと個人間の家屋賃貸借関係を規律し、団体法的色彩をおびる社宅の使用関係を規律するに適しないものであり、その使用関係は団体の構成員たる身分に随伴して発生するので、いわば身分に伴う一つの特権に過ぎないため、身分の喪失によって当然にその地位を失うことを根拠としています。社宅使用料に着眼して、一般にその額が種少なところより、社宅使用者の支払う金銭は、社宅使用の対価としての賃料ではないため、社宅使用の法律関係は使用貸借関係であって、この使用関係は徒業員という身分を失えぱ当然に消滅すると解する立場があります。この見解によると、借家法の適用はないことはいうまでもないため明渡の正当理由は問題となりません。この中においても、社宅使用の終了時期について、従業員という身分が存続している期間だけ使用関係が継続するという立場と、この身分の変動を解除条件とするとの立場がありますが、いずれにしても借家法の適用はないとするのは同一です。又借家法による保護はないとしながら、社宅使用の特殊性から、明渡義務は雇備契約解除後相当期間経過した後発生するという立場があります。そして如何なる期間をもって相当期間とするかは、社宅使用契約と性質上類似している国家公務員の国営宿合について、国家公務員のための国営宿合に関する法律が、公邸および無料宿合については六○日、有料宿舎については六ヶ月を限度としているのを基準として考慮すべきであることを根拠としています。

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家計と暮らし

社宅の使用関係をその使用料に着眼して、名目的なものではないから賃貸借関係であるとしながら、普通家屋の賃貸借とはその性質を異にしているため、借家法の適用はないとする立場があります。その理由とするところは、社宅は使用者が労務者をして労務の便宜上居住させるものであつて、性質上その居住関係はその雇借関係とともに終始すべきものである。このことは入居に当って、在職中に限り使用するというような社宅規則の有無に拘らず、社宅料を徴取していたとしても、借家法は適用されないというのであり、又借家法の性質より、借家法は建物利用関係のすべてに伴って適用されるものではなく、営利目的で締結され、しかも一時使用でない有償の建物利用関係についてのみ適用されるものであるため、たとえ社宅の使用関係が賃貸借関係であるからといって、直ちに借家法が適用されるべきではないというのです。
社宅の使用関係は社宅料の現実の額を基準にして考慮すべきではなく、名目的か対価的かは、その企業や労使関係から判断すべきであって、一応の賃料が支払われている限り、原則的に賃貸借関係があると考えるべきです。そしてその使用関係が賃貸借関係であるとすれぱ、一般の建物の賃貸借関係と何等区別して考える必要なく、借家法は当然に適用されるべきであるという立場があります。その理由は、社宅が社宅として利用されるのは雇用関係なくしては考えられませんが、雇用関係と社宅の使用関係とは相表裏して随伴するものでなく、又両関係が開始の時期を同じくしなけれぱならないことはないと同様に、終了の時期においても同時でなければならないということはありません。又借家法が営利目的で締結された賃貸借についてのみ適用されることについても、社宅は使用者が慈善事業として徒業員に使用させるものではなく、従業員の能率増進、労衝者募集、労務管埋の手段として利用されているところより営利性があるため、借家法は当然に適用されるというのです。
企業組織の必要的構成部分として直接に企業運営の目的に資する社宅と、福利厚生施設たる社宅との二つを区分し、前者は労働関係が終了すれぱ当然にその社宅使用関係も終了しますが、後者は借家法が適用され、その明渡事由が正当事由に該当する場合に限って終了するとの立場があります。
工場長社宅、秘書社宅等は一般従業員の社宅と異なり、特殊性をもつことは認められますが、それが一個の社宅である限り、居住の実態や社会生活上の意義は一般社宅と何ら異なるところがないといわなけれぱなりません。徒って社宅の居住を一つの労働条件と見て、労働契約と賃貸借契約あるいは使用貸借契約は全然別個のものであり、ここにおいては労働契約のみが、契約として存在するという考え方は居住という実態を軽視した考え方で採用し得なません。又、勿論この種の社宅は単にこれらの人が居住するという利益の面のみでなく、労務給付に付随する義務という面をも備えているため、使用料は徴収されませんが、徴収されても極めて低廉であり、家屋の補修、租税等もすべて会社で負担する場合が多いが、居住という実態を考えそれが賃貸借関係であるとするならば、借家法の通用を排除すべき理由は見出すことが出来ません。従って社宅の使用関係はそれが役職と結びついているからといって、直ちに借家法の適用を排除するのではなく、具体的事情に応じて個別的に判断し、それが使用貸借関係である場合は借家法の適用を排除しますが、それが賃貸借関係である場合は当然借家法が通用されると解釈すべきです。

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