社宅の使用

従業員に使用させるため建築したり、もしくは購入した社宅を徒業員に使用させるに当っては、社宅使用規則を作ったり、契約書を差入れさせたりすることが多いのですが、それは従業員の身分を失った場合は短時日のうちに明渡すべき案項を含むのを例としています。しかし、かかる条項の効力を否定している借家法があるため、その効力をめぐって法律上問題が発生して来るのです。しかし一般的に社宅といっても、それは世間の通俗語であって厳格な概念規定をもった法律上の術語ではなく、その形態についても、個別的住宅から鉱山や工場地帯におけるような集団的住宅、戦後各地に建てられるようになったアパート式住宅、更には独身者のための独身寮等様々であって、一律に定義することは極めて困難です。しかし、これらの住宅はいずれも所有者が会社であり、借家人が徒業員であるというところより、程度の差こそあれ家主と借家人という関係とともに、使用者と労働者という労働関係においても深刻な問題を提供するのです。

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家計と暮らし

社宅をめぐる法律問題としては、その使用関係、私生活の自由、秩序および安全衛生等についての問題が多くありますが、特に戦後の深刻な住宅難に伴い被雇用者や退職者が社宅に居住するのやむなきに至っていることによって、その明渡をめぐっての紛争が数多くあらわれ社会的にも重要な問題を提起するに至りのした。いわゆる社宅の問題といっても、根本的には政治の問題に連っており、その社会的機能についてもこれを種々の角度から分析検討すべき事柄ですが、今日の社会的住宅事情からいって労働者にとって退職したら直ちに住宅を明渡さなければならないかということがもっとも切実な問題です。
労働者は退職したら直ちに社宅を明渡さなけれぱならない義務があるのでしょうか。民法は家屋の貸借関係について、二つの異なった取扱いを規定しています。使用貸借と賃貸借がそれです。使用賃借の場合には返還の時期を定めない限り、家主はいつでもその明渡を請求することが出来るのに対し、賃貸借の場合には、借家法の通用を受け、家主は自から使用することを必要とする場合、あるいはそれと同等程度の必要ある場合でなけれぱ明渡の申込をすることは出来ず、更には正当な理由ある場合であっても、六ヶ月前に申入をしなければならない等の借家人保護の規定が設けられています。
従って、一般的に被解雇者又は退職者に対して、退社を理由にして建物明渡請求訴訟を起す場合、法律上問題となってくるのは、社宅の使用関係が使用貸借か賃貸借か、又賃貸借とすれば借家法の通用があるか否かの点です。判例学説を大まかに分類すれば次のようになります。
社宅の使用関係はそれが有償であろうと無償であろうと、性質上借家法の通用なく、社宅使用規用ある場合はそれが優先するとするもの。
社宅の使用関係は居住者が僅少の修繕料、電気料、水道料等しか支払わないので、原則的に使用貸借であるとするもの。
社宅の使用関係はその対価が支払われていることより賃貸借ですが、それは性質上雇用契約とともに終始すべきであり、又営利を目的とするものではないため、借家法の適用は排除されるというもの。
社宅の使用関係は如何なる名称であろうと、その対値が支払われる限りその法律関係は賃貸借であって、従って借家法は当然適用されるとするもの。
一般的にいって、社宅の使用関係は雇用契約とは別個の契約によって締結される場合が多く、従って雇用関係あることが社宅の使用契約の前提となっていることは否定し得ませんが、雇用契約の発生する以前においても社宅使用の関係が関始することもあり、終了後においても、この関係が継続することがあります。又会社は一雇用関係があるからといって、必ず従業員を社宅に入れなければならない債務を負うものでもなけれは、従業員も雇備契約上の当然の権利として社宅の提供を要求し得るものでもありません。この意味において社宅の使用関係は、あくまで雇備契約とは別個の社宅貸借契約に基づく関係であって、雇備契約と密接不離なもの、一体不可分なものであるとの考え方は必ずしも、社宅の特質をいいあらわしたものとはいえません。従って、社宅使用の法律関係が如何なる特質をもつかは、社宅規則等の内容によって規律されるものではなく、社宅使用料の有無、その額の多寡、社宅料を現物給与として所得税の源泉徴収をしているか否か、社宅入居者と他の従業員との会社に対する関係等諸般の事情を考慮して定めなければならないのであって、社宅を従業員のみにしか貸与しないということは、社宅を利用し得る者の資格要件たるにとどまり、それ以上の意味をもたないと解釈する方が実情にそうた見方です。更に又、社宅が一般に利用される目的は、労働者をよそから集め、定着させるための必要な手段として生れて来たものであって、このようにして確保された労働力を使用者が一手に握り、労務管理の有効手段としで利用するため設けられたものと考えられます。従って社宅使用は単に恩恵的な意味で供与されたものではなく、直接的には福利厚生施設ですが、間接的には企業経営の能率増進のための施設です。この意味において、社宅の使用関係は現物給与的性格をもつものであり、このことは明確に現物給与として給与の中に加算し、所得税の源泉徴収をしている例があることによっても明らかにされます。

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