地代家賃増減額請求権

地代家賃増減額請求権行使の効果は、増減額請求権の性質から、基本的には導き出されます。したがって、増減額請求権行使の効果をみるためには、増減額請求権の性質および性質に基づくその行使方法を眺めておく必要があります。借地、借家法の制定後、初め判例は増減額請求権を債権的請求権と解し、相手方の承諾またはこれに代る裁判がなければ効力が生じないとしていました。しかし、その後形成権と解し、増減額請求権者の一方的意思表示によって当然に増減額の効果を生じ、相手方の承諾またはこれに代る裁判を必要としない、としています。増減額請求権が形成権であること自体には、現在、学説も反対するものはありませんが、一方的に効力を生じることからくる弊害、特に賃貸人がなす賃貸借契約の解除をめぐり、形成権の余りに強大な効力を抑制するのに腐心しているといえます。しかし公平の立場、あるいはさらに社会法の本質を考慮しての立場から取られるこうした配慮は、賃貸借契約の解除の点のみならず、一方では増減額請求の成立要件にもかかわるところの、増減類請求権の行使方法の点でも取られてゆくことが望ましい。

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増減額請求は当事者の一方の意思表示により確定的に法律効果を発生させるために、その意思表示は明確なものでなければなりません。問題となるのは値上げまたは値下げ交渉です。借家の事例ですが、初め判例は特別の事情がない限り賃借人の値下げ交渉はとりも直さす借家法七条による値下げ請求の意思表示といえるとしましたが、その後動揺して、借地の事例において、値下げ交渉は普通には借地条件変更に関する希望の表意に外ならず形成的効力を有するほどの確実性を有しないとしました。しかし、大審院はこの東京控訴院判決を覆えして、値下げ交渉に形成的効力をみとめ、表意者に借地法一二条に墓づいて権利を行使するとの認識があることは必要でないとしました。たしかに、表意者において、増減額請求の意思表示が形成的効力を持つとの認識があることは不要ですが、値上げまたは値下げ交渉が駈引の段階にとどまるかそれを超えて通告の段階に達したかの判断は事実認定の問題というべきであり、前者と認定されれば増減額請求の意思表示とみるべきではありません。
第二に、意思表示の方式は裁判上でも、裁判外でも差し支えがありません。よって、家賃値上げの調停申立書が送達された場合には、値上げの意思表示がなされたものといえ、準備書面または口頭弁論で増減額を主張することは増減額請求権の意思表示となります。しかし裁判上防御方法として提供される場合、民訴法一三七条による制限を受けることがあります。
増減額請求の効果の発生と相当額の確定は第一に、増減額の効果が発生する時期は増減額の意思表示が相手方に到達した時です。停止条件を付した場合は条件成就の時に生じます。増減の効果は意思表示が到達した時から将来に向って生じるものです。増減額請求後にさらに増減額事由が発生しても、新たに増減額請求をしないかぎり、先になした請求の範囲内でさらに増減額の効力が生じるものではありません。
第二に、相手方が増減額を全く否定するかその幅に異論をとなえること、つまり相当額について争いが生じた場合、結局裁判所が相当額を確定することになりますが、その確定は客観的に定まっている相当額を確認するにすぎません。このことは、ひとつは、裁判所が相当額を確定する場合には、賃料決定の基準となる一切の経済事情の変動を考察して判定しなければならないもので、当事者の主張する数額に一致するを要しません。ことまたひとつは、裁判所が相当額を確定したら、その確定相当額は遡って増減額請求の意思表示が相手方に到達した時から有効に存在したことになる、ということを意味します。
第三に、相当額算定に料酌される事情は、請求当時の経済状況や当該貸借関係の諸般の具体的事情があげられます。地価の高低、水利の便、改良工事、権利金授受の有無、比隣地代家賃、愁然費、諸税金、火災保険料、附近道路の良否、附近の騒音、貸借関係の継続期間、建物の経過年数と耐用年数、地代家賃の協定事情、協定後改定したらその当時の経済状態、現地代家賃の協定時期などが考慮されています。
増減額請求をめぐる争いが生じると、催告の当否、弁済提供または供託の当否、解除の有効、無効に争いが発展し、当事者間の関係を徒らに紛糾させるばかりでなく、感情的に妥協の余地のないところまでおしつめる感があります。よって、借地、借家法改正は増減額の請求は裁判所に対してなされ、増減額の効力は判決の形成力によって生じるものとしています。

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