不動産賃貸借権の存続期間

民法は、有料の物の賃借関係をすべて一律に賃貸借関係と把握し、土地、建物など不動産の賃貸借について、不動産利用の法律関係の特性を充分意識して規定したものとはいえません。その存続期間についても、当事者が約定する場合には二○年以上であってはならないとしてその最長期を制限し最短期について何ら定めるところなく、期間の約定のない場合は契約自由に放置されていて、その継続性の保障はきわめて不充分です。したがって、継続性が要求され、相当長期の存続が予定せらるべき、建物所有目的の土地賃貸借につき、二年、三年という短期間が約定されても有効だということになって、その不合理性は明瞭です。これは、あまり長期にわたる賃貸借は当事者において物の改良保全を怠りがちとなり、社会経済上の効用からも好ましくなく、長期間には著しい経済事情の変化も予想されるため、それに即応できないような事態も生じるであろうし、また、当事者が二○年以上の土地の貸借をする必要があるたらば地上権、永小作権のごときを設定すれぱよいという考えに基づいての規制だと説明されています。このことは、市民法理に基づく賃貸借一般については妥当です。しかし、不動産賃借権特に借地権についでは、著しい不合理、借地人の不利益がもたらされる。つまり不動産賃借権、借地権の存続期間が短期に定められ、あるいは期間を定めないというのが通例だということになると、賃借人は、いまだ建物の命数があるのに、期間満了、借地権消滅ということで、建物取去、土地明渡を迫られるという極めて不安定、不利益な状態に放置される結果になります。もっとも、民法上の解釈でも、賃貸借がなされた目的からみて、期間の定め方がいかにも不合理だと認められるような場合、例えば宅地の賃貸借期間を二年とか三年という短期に定めるのは、借地上に建物を所有して居住し営業するという目的に著しく反するため、いわゆる例文であって当事者を拘束する効力はないと解したり、あるいは地代据置期間と解することによって、かような解釈をもたらした判例や学説の努力によって、その不合理性はいくぶんか救済されることにはなりますが、解釈による契約の合理化には限度があり、また、必ずしも判例が安定していたわけでもありません。ここに、不動産賃借権特に宅地の賃借権の存統期間について特別法が要請される所以があるのであり、やがて借地法が、後述のごとく、存続期間についての民法の規定を根本的に修正し、最長期を抑えす最短期を制限し、もって借地権の存続期間の長期化、継続性の保障をなすに至った理由があります。

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民法も、賃貸借存続期間の更新を認めています。合意による更新と黙示更新です。そもそも更新を認めることは、賃貸借が継続的法律関係であるところから当然の措置なのですが、民法上の更新は、いずれも当事者の意思にかからしめられるもので、純粋客観的にその存続、継続を図るという制度ではありません。つまり合意による更新は、更新するかどうか当事者の自由意思に委ねられるものです。黙示更新は、賃貸借期間満了後、賃借人が賃借物の使用取益を継続する場合に、賃貸人がこれを知って異議を述べないときに、更に賃貸借をしたものと推定されるもので、単に賃貸借の存続が推定されるに過ぎず、更新の意思を有しない当事者のために、反証を挙げ てこの推定をくつがえす余地を残しているのです。また、更新後の期間の保障も必ずしも充分とはいえません。つまり合意による更新には最長期の制限があり黙示更新は、更新後は期間の定のない賃貸借として、いつでも解約できる状態になります。ここに、借地法、借家法、農地法など特別法が、借地、借家その他の不動産賃借権の客観的な継続性を図るために、更新制度の特別規制をした所以があります。
当事者が存続期間を定めなかった場合には、民法は、解約自由の建前をとりました。もっとも、解約申入期間の定がありますが、これも任意規定と解されるため当事者の特約によって排除することができます。したがって、御都合により何時でも明け渡します。という約定があったりすれば、予告期間に関する規定は一片の反古となります。なお、民法上は、賃貸借期間を定めた場合でも、その期間内に当事者が解約をなす権利を留保すれぱいつでも解約できることになっているので、いずれ民法上の解約の制度は、継続性を本領とする不動産賃借権について不合理であり、賃借人の地位は不安なものになつています。もっとも、この点についても、解釈上、期間の定なき土地賃貸借は、地上建物の朽廃まで存続させる約旨であると解したりしてその欠陥補正の努力が払われたのですが、早晩、立法的に解約自由を抑え制限する措置の必然性が存したのです。つまり、やがて、不動産賃借権の継続性、賃借人の地位の安定確保のために、あるいは強行的に存続期間を法定しあるいは正当事由その他の拘束を加えて解約告知を制限するという借置が考案されるに至ったのです。こうなると、解約は、単に賃貸借終了の原因としてだけみらるべきではなく、賃貸借の存続、継続という立場から、存続期間と密接な関係を持つ規制ということになります。
不動産利用の法律関係は、何も賃貸借によるものぱかりではありません。しかし、近代市民社会においては、賃貸借が不動産利用の法律関係の通例的事態になっていることを思えば、宅地、建物、農地など不動産の利用、その存続、継続性は、民法的規制をもってしては充分保障されておらず、その利用者、賃借人の地位は不安定、不利益なものに放置される結果になっています。そこで、不動産賃貸借の存続期間に関して、宅地の賃貸借については借地法、建物の賃貸借については借家法、農地の賃貸借については農地法と、それぞれ特別法による規制がなされるに至ったわけですが、現在は、不動産賃借権の主要なものの規制が民法を離れ、民法を適用する余地はほとんどないといっていい状態になっています。学音も、民法の賃貸借法現そのものが、借地、借家、小作にまで及ぶ社会的現行法であるとの理解の下に、その適用を論じることは無意味であると論じています。

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