造作買取請求権の行使と結果

造作買取請求権は形成権です。造作買取請求権の法的性質については、学説判例ともに借地法四条二項・一○条の建物買取請求権と同様に、形成権であると解しています。従って、賃貸人の承諾またはこれに代る確定判決を必要とせず、賃借人の単独の意思表示で効力を生じます。特別の方式を必要としないため、書面または口頭でなしうるのはもちろん、訴訟止では攻撃防禦の方法としてこれをなすことができ、訴状、答弁書その他の準備書面に買取請求の意思表示が記載され、これが相手方に送達された時に買取の効力が生じます。なお、賃借人は、建物の明渡請求をうけた場合は、賃貸借の終了を条件として、予備的に造作の買取を請求することができます。行使の時期については制限がありません。買取請求権の成立後、造作の滅失、買取請求権が時効により消滅するまでの間に何時でも行使できます。

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造作買取請求権は、造作に附随する財産権であって、賃貸借の終了後は造作とともに譲渡することができます。相手方は賃貸借終了の時の賃貸人です。転貸借の場合には、その終了当時の転貸人が買取義務者であり、賃貸人は転借人の買取請求権行使の相手方となりません。もっとも、転借人が直接家主の同意を得て附加した造作または家主から買受けた造作であれば、直接家主に対して買取請求を認むべきです。
買取請求権の行使によって、造作について、賃貸人と賃借人との間に売買契約が成立します。従って、特定物の売買に関する規定が適用され、危険負担は造作の買主となった賃貸人に帰します。賃借人が買取請求したのち、その造作が滅失毀損しても、それが賃借人の責に帰すべからざる事由に基づくときは、買取り代金債権を失うことはありません。
また、買取請求は賃借人の単独行為であるところから、担保責任の規定は原則として買取請求には適用されません。
売買の目的物となった権利の全部または一部が他人に属する場合における担保責任並びに売主の契約解除に関する民法五六一条ないし五六四条の規定は、造作が借家人の所有であることを買取請求の要件とするところから適用はなく、もし、造作が他人の所有に属しているときは買取請求は当然無効となります。
売買の目的物の数量不足の場合並びに売買の目的物である権利が他の権利、つまり留置権、質権などで制限されている場合に関する民法五六五条・五六六条の規定も通用がありません。買取請求の場合における代金額は当事者間の合意で定まるものではなく、客観的に決まっている時価によるものであり、時価は造作の所有権の現実の状態によっておのずから定まるからです。のみならす、この場合における買主の善意悪意、造作買取の目的については考える余地はありません。
しかし、売買の目的物に対する先取特権の行使によって、買主が所有権を失った場合に関する民法五六七条の規定は適用ありと解すべきです。つまり先取特権の行使によって、賃貸人が造作の所有権を失ったときは買取請求を解除しうべく、また、自ら被担保債務を弁済して所有権を保存した場合は、賃借人に対して、その賠償を請求することができ、さらに、いずれの場合にも、賃貸人が損害をうけたときは、その賠償を請求することができます。
瑕疵担保に関する民法五七○条の規定も適用されません。造作の暇疵は、それが隠れたるものであると否とを問わず、時価を定めるについて当然に掛酌されるものです。
代金は時価で定まります。借地法の建物買取請求権の代金と同じく、取りはずした値段ではなく、建物に附加されている状態における値段です。しかし、無形造作ないし権利金としての対値は含まれません。これは営業的利益としで別に考慮すべきものです。
時価算定の時期については問題がありますが、造作についての売買契約成立、つまり買取請求権行使の時を標準として算定すぺきものと解する学説がありますが造作買取請求権の制度が賃貸借終了後に賃貸人が不当に利得することを防止する趣旨をも含むものであることにかんがみ、賃貸借終了の時期における時価を算定すべしとする学説が有力であり、判例も同旨のものが多い。
賃借人は、造作代金について建物の上に留置権を有するか、また、造作代金と建物の明渡との間の同時履行の抗弁権を持つかは問題とされます。判例は、造作代金は造作について生じた造作の対値たるにとどまり、建物の対価でないことを理由として造作だけを留置し、または造作だけの引渡と同時履行を主張することはできますが、建物についてはできないといいます。しかし、この理論では、賃借人は造作そのものについては留置権や同時履行の抗弁権があるとしても、建物を占有する限り不法占有者となるため、建物から造作を取りはずして賃貸人の建物明渡の請求に応じなければならなくなります。これでは造作の利用を全うすることはできなくなり、造作を建物から分離しては価値を失うという立法の趣旨を没却することになって、妥当ではありません。のみならず、借地法四条および一○条の建物買取請求権が行使された場合に代金の支払と敷地の明渡との間に留置権や同時履行の抗弁権を認める判例の理論とも一致しません。

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