借家人の投下資本の回収

不動産の賃貸借において問題となるのは、土地や建物の所有者である地主や家主の利益と現実に土地や建物を占有使用する借地人や借家人の利益とをいかに合理的に調整するかということです。借地人や借家人は、賃貸借契約関係によって、土地や建物を基盤として住居または営業という社会生活関係を築いているため、まず、賃借人が営む社会生活関係の基礎である土地や建物についての賃貸借契約関係の維持をはかる必要があります。次に、賃借人が賃貸借の目的物を利用し、または、改良するために資本を投下したときは、賃借人がこれを回収しうるための手段を講じる必要があります。

スポンサーリンク

家計と暮らし

借家人が賃借建物の利用または改良のために投下した資本の回収について、民法は二個の手段を講じてます。その一は、建物賃貸借終了の際における賃借人の収去権であり、その二は、費用償還請求権です。つまり、賃借人がその費用をもって賃借目的物に附加したものが独立の存在を有するとき、例えば、住宅の賃借人が畳、障子を入れ、店舗の賃借人が商品の陳列棚を作ったような場合には、賃借人はその附加したものの所有権を保有します。従って、それらのものが建物の客観的価値を増加させる場合でも、有益費償還請求権は生じません。のみならず、賃借人はその附加したものを収去する権利を有すると同時に貸主の請求に応じて、これを収去する義務をも負担すると解されています。これに反して、その附加したものか賃借建物の一部を構成し、建物所有権に吸収される場合には、賃借人はその所有権を保有せず従って、建物について支出した必要費または有益費として家主に対し償還を請求することになるものです。しかしながら、賃借人の附加したものが独立の存在を有するときでも、それは通常建物に附属せしめて建物の使用の便宜に供されている状態のもとでは価値のあるものではありますが、これを取りはずして他に動かすとさは、これをその目的にしたがつて使用することができなくなります。使用することができるとしても、その経済的な価値は著しく減少することが多く、したがって、たとえ賃借人に所有権を保有させても、賃借人は賃借建物からこれを取りはずして回収するか、または賃貸人その他に潰し値段で買取ってもらうか、いずれかを選択しなければなりません。かつては、賃借人の投下資本の回収は実際上、明らかに困難です。逆に改良のために附加した結果が家主の所有権に吸収され、所有権を保有しない場合の賃借人の方が、有益費償還請求権によって投下資本を回取することができることになり、両者の間に不均衡を生じることになります。また他面、建物に附属せしめたものを取りはすすごとによって、その価値の減少をさたすことは、社会経済上の立場からいっても損失です。してみれば、この点民法の規定では、もはや今日の社会状態における妥当な解決方法というわけにはいきません。そこで、借家法五条は借家人保護の立場を堅持しつつ、なお、当事者双方の利害を調節すべく、建物賃借人に対して投下資本を回収する便宜を与えるとともに、他面では、建物の客観的利用価値を増しています。造作を取りはずすことによって生じる社会経済的損害を防止するために、建物賃借人に造作買取請求権を与えることにしたのです。この意味では、借地法四条二項の建物買取請求権と趣旨を同じくします。のみならず、本条は民法の有益費償還請求権と基底を同じくし、むしろその進展とみるべきものであるため、民法によって民法の上に出ようとするものであるということがいえます。

家計と暮らし
借地人の建物買取請求権/ 買取請求権制度/ 借家人の投下資本の回収/ 造作買取請求権/ 造作買取請求権の行使と結果/ 不動産賃貸借権の存続期間/ 宅地賃貸借の存続期間/ 地代・家賃/ 地代家賃増減額請求権/ 敷金返還債務/ 統制令の適用のない場合の権利金/ 賃借権の譲渡/ 賃貸人の承諾のない譲渡/ 賃貸借契約の解除/ 賃借権の相続/ 賃貸人の自己使用と明渡請求/ 賃貸借契約の利益比較の原則/ 社宅の使用/ 社宅使用の法律的性質/ 賃貸借契約の成立/ 親族間の不動産利用/ 親族の不動産利用の第三者の影響/ 家屋明渡の正当事由の存在時期/

        copyrght(c).家計と暮らし.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー