契約と契約書

私たちは日常生活で、食料品を買ったり、クリーニングをたのんだり、医者にかかるなど、法律上で契約とよばれる行為を数多く行なっています。そして、これらの日常的な契約(取引)については、ほとんど契約書をつくりませんが、多くの場合はそれでことがたりています。
法律上では、ごく少数の例外を除いて契約は当事者の合意があれば有効に成立し、契約書という書面をつくることは、契約の成立のために必要なことではないとされています。
ですから、私たちが日常的な取引について、契約はしても契約書をつくらないですませているのは、法律の理論としては、それでよいわけです。契約に際し契約書をつくるということは、主としてその契約について証拠を残すということ、特に裁判になった場合の証拠とすることが実際上の理由となります。
日常的なちよっとした取引では、取引条件(内容)がきわめて単純ですし、また相手方が顔見知り、例えば出入りの商人であるなどで信頼感のあることが多くて、特に証拠を残す必要のないことが多いわけです。また、いちいち契約書をつくるのは、たいへんわずらわしいことですから、そのほとんどが口約束だけで処理されています。
それはそれでよいのですが、少しで も特別な契約という場合には、契約書、またはそれと同様に後日の証拠となるもの、例えば預り証とか、通帳式のものをつくっておくことを考えておく必要があります。取引金額、あるいは取引対象の価格の大きいものや、重要な内容の取引では、契約書をつくるというだけではなく、その内容も弁護士に相談したりして慎重に定める必要があります。
もっとも、契約書がないと、その取引について争いとなり裁判となったとき、かならず負けるというわけではありません。そういう場合は、契約をしたということについて、他の証拠、例えば第三者の証言で立証することができればよいわけです。しかし、契約書があるほうが、より端的に契約の存在を立証できることはいうまでもありません。

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契約書がないか、あってもそれが簡単なもので、契約条件について細かい取きめのない場合もあります。例えば、金を貸したという証文はあるが、返済期日とか利息についてはなにも定めなかったというような場合です。そういうときは、裁判所はその点を法律の規定によって裁判します。ですから、法律の規定と異なる条件で取引したい、例えば、法律で定められた以上の利息をとりたいというときは、契約書にその旨を書いておく必要があります。契約書をつくって、それに細かく条件をきめておくことは、そういう意味でも大切なことです。
契約をした以上、契約書がつくられているといないにかかわらず、契約上の義務は守られなければなりませんが、契約書がつくられていないと、契約上の義務を相手が守らないということも 実際にはあります。契約書をキチンとつくるということは、それだけで、相手に契約上の義務を履行させるという効果がある、といえるでしょう。
契約書は、ワープロで打つか、市販の用紙を利用して、単に当事者が名前を書き印を押したもの、私証書あるいは私製証書と、公証役場で公証人の面前で当事者が契約内容を述べて、公証人に公正証書につくってもらうものがあります。一般には、私証書で作成するのがふつうですが、金銭貸借の契約書などを本格的につくりたいときは、私証書よりは法律上強い効力のある公正証書を利用します。私証書の契約書には縦書きのものと横書きのものがあります。これは単なるレイアウトのちがいで、法律上の効力にはまったく関係ありません。伝統的に和文の契約書は縦書が用いられてきましたが、最近では横書きも多く利用されるようになりました。
契約書は当事者の全員が名前を書き、印を押すというのが正式のやり方ですが、一方の当事者のみが作成して相手にこれを差し入れるという証文型、あるいは申込書型の契約書もあります。証文型は、例えば借家契約書とか貸金の契約書、金銭消費貸借契約書のように、差し入れる人がもっぱら義務を負って、差入れを受ける人にはとくに義務がない、という性格の契約に利用されます。申込書型は、例えば分譲地の申込証のように、大量に契約事務を処理する場合、一方の署名捺印の労をなくすために利用されますが、申込をうけたものの承諾の意思が、別に文書で示されるものと、特にそういう文書がつくられないものがあります。後者でも、実際には承諾がなされていると解釈されるものが多くあります。
契約書には○○契約書という題名をつけるのがふつうです。単に契約書でも差支えありませんがなるべく契約の内容を示 す題名をつけるのが望ましいでしょう。
契約書という題名をつけずに念書とか覚書とかいう題名をつけることがあります。元来、契約書というのは、ある権利義務の関係が新たに発生し、あるいはそれが変更され、もしくは消滅する内容の文書であるべきです。ですから、例えば単に今までに借りた借金の総額を確認するというような内容のものでは念書というような表題がよいわけです。しかし、内容は本来の意味の契約書であっても、わざと念書という題名をつけることもあります。覚書も、キチンとした契約書になる前の取きめの大綱だけをとりあえず定めたもの、というような場合に用いるべきでしょうが、念書と同様に、内容はキチンとした契約でも、わざと覚書とすることがあります。いずれも契約書では題名としてかたくるしいから、という心づもりでしょうが、あまり乱用することは好ましいことではありません。
仮契約書とよばれるものには、1.効力の発生が条件つきのもの、例えば会社の合併契約は株主総会の承認をえることが効力の発生条件となる。2.当事者が解除権を留保しているもの。3.正式の契約書を作成する前のものなど、様々の性格があります。2.のような性格のものならその旨を契約書中に明言すべきですし、3.は名前は仮契約書であっても契約としてはやはり効力を生じているとみられるものが多いでしょう。
念書、覚書あるいは仮契約書というような題名のものは、その内容によって、印紙税法に定められた印紙をはるのであって題名だけで印紙税額を判断することはできません。
差入証型の契約書は別として、当事者がすべて調印、署名または記名捺印するふつうの契約書では、当事者の数だけの契約書をつくり、各人が一通ずつ保管します。もっとも、債務者に保証人がついているような場合は、保証人が債務者と並んで調印しても、保証人のために一通余分につくるということは、あまりしません。
また、売買契約で売主が共有者で、二名以上いるという場合も、売主側の分として一通作成し、売主グループでそれを保管することが多いようです。
契約書は、あとで裁判になったとき、それが証拠として使えるかどうか、ということが大切なので、単なる写しとか控えは証拠力がありませんから、価値がありません。
なお、契約当事者が署名(記名)捺印をしているならば、印紙が貼付されていなくても契約書としての効力は変わりありません。ですから、印紙が貼付されていないからということで、その契約書が写しや控えになるわけではありません。写しや控えの心づもりで、当事者の署名(記名)捺印している契約書に印紙をはらないでおくと、罰金または科料に処せられますから、注意を要します。
裁判上の証拠として使える写しをつくるには、公証人によって認証をうけた謄本にするほかありません。
法律上は、写し(謄本)に対して、契約書の本物を原本とよぶことがあります。また、謄本のうちでも特殊なものを正本とよびますが、一般には、契約書の写しや控えに対して、本物の契約書を正本といっています。副本も、法律上は一種の写しですが、一般にはほとんどそういうよび方はしません。

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