当座勘定取引とは

当座勘定取引は、個々の商取引についての支払決済事務を銀行が代って引受け、現金決済の煩雑さや危険をさけて、銀行の取引先の支払事務を合理化するという役割をもっています。取引先は、支払のための資金を銀行に預金しておき、取引銀行を支払人とする小切手や銀行を支払担当者とする手形を振出し、その小切手や手形の所待人がそれによって銀行から支払を受けるわけです。取引先が現金で支払をするかわりに、手形、小切手を利用して当座預金で支払うということから、当座預金は、通貨と同じような機能を果たすことになるので、典型的な預金通貨であるといわれています。
 しかし、実際には振出された手形、小切手の全部が必ずしも現金で支払われるのではなく、受取人の当座勘定に入金されるものも少くありません。その場合は、銀行は現金を必要としないので、現金支払にそなえて当座預金残高の一部の現金を用意しておけばよいことになり、余った分は貸出にまわせます。そして、通貨の総量は現金通貨と預金通貨の合計となるので、当座勘定取引によって信用創造が行われるわけです。

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当座勘定取引は、銀行と取引先との間の当座勘定契約にもとづくものであり、その内容は当座勘定規定と商慣習によって定まっています。この契約は、取引先の振出した手形、小切手の支払を銀行に委託する支払委託契約と、支払資金を銀行に当座預金として預けておく当座預金契約とを主な内容とする複合契約であると考えられています。また、取引先は、支払資金を当座預金としてあらかじめ銀行に預けておくのが普通ですが、当座預金残高がなくても銀行が一定限度まで取引先へ支払資金を融通するという当座貸越契約が、当座勘定契約に附随して結ばれる場合もあります。
 小切手法三条によると、小切手の振出は、それが銀行に呈示されたときに振出人が自由にできる資金のある銀行にあててなされ、かつ振出人がその資金を小切手によって処分できる旨の契約に従ってなされなければならないとされています。当座勘定契約は、この小切手契約にあたります。これは小切手による支払を確実にするための規定なので、これに違反しても小切手自体は有効ですが、振出人は過料に処せられます。
 預金契約は、法律的には消費寄託契約であるとされています。消費寄託契約は要物契約といって、現実に金銭の預入れがなければ契約は成立しないのが原則です。しかし、当座勘定契約は、消費寄託契約そのものではないので、当座預金残高がゼロの場合でも有効に成立します。このことは、取引開始と同時に貸越を行う場合を考えると納得できます。当座勘定契約の一部となっている当座預金契約は、取引先からの入金の申出があれば銀行はいつでも預金として受入れることを約束したという内容の消費寄託の予約を含んでおり、したがって、当座勘定契約は取引先と銀行との合意だけで成立するわけです。そして、残高がゼロの場合でも基本契約の効力は失われないとともに、具体的な入金があった場合にはその金額について消費寄託としての預金が成立するということになります。もっとも、銀行実務上は、第一回の入金が行われることを条件として取引を始めることが多く、それまでは小切手用紙を渡さないのか普通です。したがって、このような合意があるときは、第一回の入金があるまでは契約の効力を生じません。
 当座勘定契約に交互計算契約が含まれているかどうかは一つの問題ですが、今日では当座勘定契約は交互計算契約でないというのが通説です。もし交互計算契約が含まれているとすると、銀行は、小切手の支払により、取引先に対するその支払額についての費用償還請求権を取得する一方、取引先が預入れた当座預金については預金債務を負担し、それぞれの総額を一定の計算期の期末に相殺していることになります。そして、銀行が期末に取引先に送る当座勘定決算通知書が商法五三二条の計算書に該当し、その承認によって当座勘定の残高が確定することになるわけです。しかし、当座勘定では、日々、入金と支払を計算してその残高を計上しており、債権と債務な併立させてはいないので、これを交互計算とみることは実情にあいませんし、現在では決算通知書をやめて、照会に応じ残高を報告することにしています。したがって、支払委託契約とその資金としての当座預金契約があるとみるのが一般の考え方ですが、これを段階的交互計算と説明する考え方もあります。

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