借金は恥か

 借金というと、困ったことだとほとんどの人が顔をしかめます。他人からお金を借りるのは良くないこととし、借金をしているのを恥とする感覚が、何百年も前から、われわれ日本人の心の中に生きていたからでしょう。
 多くの富を築いた名門ファミリーが子孫のために遺した家憲、家訓を見ると、ほとんどといってよいくらい、他人からお金を借りるな、また容易に貸すなという項目が入っています。
 たとえば、大阪の富豪だった青谷家では、八つの禁物の一つとして、「金銭を借り女性に迷うこと」と明記していますし、長野県の養蚕家として有名だった曲尾家では「家長の承諾をえずして金銭物品を借用し及び購入したるとき」を罰則事項としていました。
 岡山県で製塩業を営んでいた野崎家では、事業がうまくいかなくなったら、借金をするよりも、むしろ早期撤退をはかれと説いています。すなわち、世間に隠し立てをせずに、まず家屋の居住スペースを縮めよ、その縮め方も、表座敷から中座敷というように、必要のない建物から壊して売却し、それでも立ち直らなかったら道具類、公債、下田(収穫のよくない田地)から中田と手放していくべきだと、詳しく説明しているのです。
 これらの家憲は、富を蓄えたファミリーの最高責任者が、せっかくためたものを子孫が浪費し、家運が衰退するのを恐れ、歯止めをかけるために堅い戒めとしてつくったわけですから、守りの姿勢で貫かれています。

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 考えてみると、これらの家憲は、いま低成長下におかれた企業の経営方針と一致しています。慢性化した不況を切り披けるためには、企業が借金をしないことがモットーとされました。
 昭和五十四年九月に亡くなったトヨタ自動車工業の石田辺三会長が、社長時代に「自己資本を蓄積しなければ企業の明日はない。三年間運動会をやっていても潰れない会社にしてみせる」と決意し、ついに借入金がゼロという無借金会社に育て上げたエピソードは有名です。このほか御幸毛織、京都セラミック、持田製薬、パイオニア、日清食品、マキタ電機、ブラザーエ業なども無借金会社として優良経営ぶりをうたわれています。
 また、野崎家の家憲に出ている、無理な抵抗をせずに、逐次減量して時機を持つという方針は、昭和四十八年の石油ショック以来、大企業でさかんに実施された、不採算部門の切り捨て、用地売却、人員整理、一時帰休などの減量経営のパターンでしょう。昔も今も人間の考えることは同じであったと苦笑させられます。

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