遠方にいる相手を訴える方法

 Aは、東京で万年筆等文房具の問屋をやっています。一昨年の三月ごろから岡山のBという人からの注文で万年筆を売っていました。はじめのうちは、代金もきちんと払っていたし、また、人柄も手堅い人のようなので、信用して品物を送っていたところ、昨年の夏ごろから、代金を送ってこないし、さっぱり音信がなくなりました。
 A氏は、整理上こまるので、昨年一ニ月二〇日、内容証明郵便で、その時現在の売掛金一五万三二〇〇円也を至急支払われたいという督促を出しましたが、これに対し何の返信もありません。
 B氏が、岡山市内に同氏名義の店舗を所有していることは知っているので、訴訟を起こせば、債権を回収する見込はあります。また、法律を多少かじったことのある友人に聞いてみると、訴えは、訴えられる人の住所地のある裁判所におこさなくてはならないということですが、岡山まで、訴訟のたびごとに出かけていったのでは、一五万円ばかりの債権の回収では、費用倒れになるし、岡山には知合いの弁護士もいないので、考えあぐねていました。

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 たまたま、司法週間の行事として、弁護士の先生方が街頭無料法律相談に応じているというので、いって聞いてみました。
 訴えは、原則として被告の住所地の裁判所にするが、これは、あくまで原則で、このほか、財産権上の訴えは義務履行地の裁判所にも起こせるし、不法行為に関する訴えは、その行為のあった土地の裁判所にも、不動産に関する訴えは不動産所在地の裁判所にも訴えられるなど、場合によって、いろいろと特別の管轄がきめられていることがわりました。
 A氏の場合は、被告の住所地である岡山の地域に訴えもよいし、また、義務履行地、つまり、B氏が売掛代金を支払うべき土地である東京の地裁に訴えてもよいということでした。もちろん、A氏は東京の地裁に訴えました。
 A氏の訴えは東京地裁で受理され、第一回の裁判期日は、本年三月二日の午前一〇時ときまりました。
 A氏には当日どうしても、かかせない所用があったので、奥さんのA子さんに、裁判所に所定の時間にいってもらいました。B氏の方は、本人も代理人もきませんでした。
 裁判所は、A氏の訴えた事件を休止にしました。A子さんは、なんのことかと、裁判所の人にきいてみると、訴訟では、簡易裁判所の事件は別として、弁護士の資格ある人でないと代理人になれない、だから、奥さんでも代理人にはなれないから、結局、A氏は裁判期日に欠席したことになります。
 当事者双方が裁判期日に出頭しないと、事件は休止になり、その後三か月以内に期日指定の申立てをしないと、訴えを取下げたものとみなされると教えてくれました。
 A氏はさっそく、期日指定の申立てをしました。裁判期日は、四月二〇日午後一時と定められました。A氏は、こんどは万障くりあわせ出頭しましたが、B氏の方は相変わらず出頭しなかったし、また、裁判所には、なんの書類も提出していませんでした。
 裁判所は、A氏に訴状にもとづいて請求の趣旨、原因を陳述させ、これで審理を終わる旨を告げて判決言渡日を定めました。判決の結果はA氏の勝訴でした。法律にあかるい友人にきていてみると、裁判期日に出頭しないと、相手方の主張事実を認めたものと、みなされるということでした。
 B氏は、被告として訴えられながら、二回にわたって欠席したので、A氏の主張事実を全部認めたものとみなされ、敗訴したわけです。
 以上のことは、相手方の住所もわかっていて、しかも送達を受けている場合ですが、被告の所在がわからないというときには、公示送達による呼出しの方法があります。これは裁判所の掲示板や官報、新聞に掲載して公示する方法です。
 しかし、この公示送達によったときは、相手が欠席しているからといってその相手方が自白したものとみなされることはないから、原告としては、証拠を提出して立証しなければなりません。

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