民事訴訟とはどういうことか

 民事訴訟とは、社会生活において発生した私人間のトラブルを国家の裁判権によって法律的かつ強制的に解決してゆく制度のことです。このように民事訴訟の対象となるものは、私人間の生活関係上の事件であり、これを民事事件と呼びます。
 民法等の私法は、私人の生活行動の準則としての役割を果たす一方、私法が認める 法的地位が侵害されたときは、国家権力により実現されることを約します。そこで、私法によって規律される生活関係をめぐっての私人間の利害の衝突、紛争は、私人間の話合いによって解決されるなら、それでよいし、話合いがつかないなら、話合いのつかない限度で事件として民事訴訟の対象となります。
 この私法によって認められている法的地位の確保を求めるのが原告であり、自分について、いかにその法的地位を確保されるべきかの判断資料を、法廷に提出しなければなりません。
 これに対し、相手方も被告として原告と主張を争い、あるいはいかに自分の法的地位が守られるべきかを裁判所に納得させるようにするために必要な資料を提出しなければならないのです。
 このように、訴訟審理が開始されても、裁判の基礎となるべき資料の提出の責任はいっさい当事者が負うものであり、また、裁判所も当事者の提出しない資料を基礎にとり入れて裁判をすることができません。こうした考え方をつらぬく原則を弁論主義とよんでいます。

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 民事事件は時々刻々と変化します。裁判所が判決をするとき存在していた金銭債権が裁判確定後には弁済によって消滅したり、時効によってなくなってしまうこともあり得ます。
 したがって、民事訴訟の判決の効力は、その判決当時における民事紛争の解決の方法を定めるものであり、その時の流れによって変化した事件の内容にまで及ぶものではありません。こうした意昧での効力を既判力といいます。民事訴訟による紛争解決の役割りの限界はこの点にあります。
 このような裁判が、一定の金銭の交付や物の引渡し、作為・不作為を内容とする命令裁判である場合には、さらに強制執行によって、その裁判どおりの実現をはかることになります。
 最後に、訴えはどこの裁判所にしたらよいかですが、原則として被告の住所や居所を管轄する裁判所です。
 もっとも、このきまりはそれほど厳密でなく、裁判所が適当と認めれば、簡易裁判所が扱う事件を地方裁判所で扱ってもよいことになっています。
 刑事訴訟とは犯罪の事実を認定して、これに刑罰を科するための手続きのことです。刑事裁判においては、犯罪があった場合には、必ず犯人を発見して処罰し、それにより秩序の維持をはからなければならないという要求(実体的真実発見主義)と嫌疑を受けて裁判にかけられた者(被告人)であっても、その人権を十分に保障しなければならないという要求とがからみあっています。
 この二つの相対立する利害をどのように調和させるかは、それぞれの国家の体制によって異なっていますが、現行の刑事訴訟法は、終戦後、英米法の強い影響を受けて新しく制定されたことと、戦前にみられた被告人・被疑者に対する人権軽視の苦い経験から、人権保障に大きな比重がかけられているのが特徴です。
 民事訴訟が私人間の社会生活上の紛争の解決を目的とするのに対して、刑事訴訟は刑法として定立された国家的規律に違反したことに対する刑罰を科すための手続きです。したがって、その手続きの内容も民事訴訟とくらべると独自の構造のものとして把えることができます。
 たとえば、現行犯を除き逮捕勾留などの強制処分をするためには、裁判所の令状を必ず必要とする主義がつらぬかれていること、起訴状一本主義にもとづいて裁判官は白紙の状態で、したがって、先入観なしに公判にのぞむようになっていること、伝聞証拠などの証拠制限があること、控訴審が事後審となっていること、などをあげることができます。このような特色をもった刑事訴訟は、第一審、控訴審、上告審の三審制のもとに、慎重に運用されています。
 前述のように、民事訴訟と刑事訴訟は、異なった目的のもとに独自の理想の実現を意図するものです。
 民事訴訟では私人間の紛争が問題となるから、問題の幅と内容は私人間で決められてしまうことができ、これが大前提となします。一方、刑事訴訟では犯罪の幅と内容は法定されているから、訴訟関係人の合意で有罪を無罪にすることはできません。この根本の相違は、両者の全体構造に決定的な影響をもたらします。
 しかし、両者に共通する面もあります。
 第一に、制度的にみると、裁判の確定によって、はじめて権利関係が確定し、刑罰も確定するということです。
 第二に、手続的にみると、訴訟審理においては、両者とも相対立する当事者(民事訴訟においては原告と被告、刑事訴訟においては検察官と被告人)は、対等の関係で訴訟に関与し、判決にいたるまでの訴訟行為をするということです。
 第三に、個人の日常生活の面でみると、民事事件が、そのまま刑事事件となる場合があるということです。
 たとえば、自分の所有する物を侵奪された場合に、その返還請求の民訴と窃盗被疑の刑訴とが併存するし、名誉毀損や信用の毀損によって不法行為による損害賠償請求と刑法二三〇条・同二三三条に該当する行為があるとして刑事訴訟が開始され得ることなどからみても、両者が日常生活において密接にからみあっていることがわかるのです。

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