結婚したら退職する旨の契約は有効か

 A子は高校卒業後、すぐに今働いている商事会社に勤め、もう五年経ちました。二年ほど前に入社した大学出のB夫と、春の社員慰安旅行のとき、言葉を交したのをきっかけに親しくなり、B夫から結婚を申し込まれました。A子として好ましいタイプの男性なので承諾しましたが、彼は入社二年で給料も二〇万円足らず、家賃五〇〇〇〇円の家賃のアパートに住んでいては食べるのがせい一杯。共稼ぎで二人分合わせればいくらか楽な生活もできます。
 ところが、入社するときに結婚したら退職するという念書を一本とられています。結婚したらどうしても辞めなければならないのでしょうか。

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 女子社員について、「結婚したら退職しなければならない」というような規定を公然と就業規則にきめてある会社はほとんどありません。この例のような念書をとるか、あるいは口頭で言質をとられることが多いようです。
 ところでこのようなとりきめの性質はどんなものでしょうか、未婚の女子はかならず結婚するものだという前提をとれば「結婚するまで働く」という期限付の労働契約ということになるし、結婚するかしないかわからないが、もし結婚したら退職するというのであれば結婚を解除条件とする労働契約になります。
 男は結婚しても退職するということはほとんどないのに女は結婚したらやめなければならない。というのは女子に対する侮辱である。と赤い気焔を上げる諸姉も多いことだろうと思われます。
 なるほど憲法一四条には性別による差別禁止をしています。けれども憲法のこの規定は法の下の平等、いいかえれば法律 上の差別を禁止しているわけで、法律に反しない個人の契約による差別取扱いを禁止しているわけではありません。
 また労働基準法四条は、賃金について男女の差別待遇を禁止しているだけで賃金以外のことにふれていません。
 これらの法律の規定は、女子を、ただ女子だからということだけの理由で、男子と差別して取扱ってはならぬ、ということをきめたものです。つまり、そういう理由からの差別扱いは合理性がないということです。形式的には、一見差別がついているようですが、そのような差別的取扱いをすることについて、なんらかの合理的な理由があれば、法はそのような差別扱いまでも禁止しているものではありません。
 このように考え、いちおう結婚したら退職するとの合意は有効であるとみられていまし。しかし、近時の裁判所の考え方は、結婚したとしても当然に労働内容だとか勤務能力が低下するわけではなく、企業に対する貢献度が劣ることにはなりません。したがって、このような取扱いをすることは、実質的にみても合理的なものとはいえないから、性別を理由とする差別であり、結婚の自由を制限するものであり、公の秩序に反し無効だとするようになってきています。

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