上部団体との団体交渉を拒否しているが

 ○○工業株式会社は、社長のA郎が過半数の株式を所有するほか、兄弟で全株を支配しているいわゆる同族会社です。経営方針も家族的経営という評判であって、労働組合もできていませんでした。
 B君は、臨時工で採用され、その後本工になった成績優秀の工員ですが、どうも社長の温情政策というのが不満です。温情を売物にして労働者の要求を巧くかわしている領向にみえてしかたがありません。ほかの者に意見を聞くと、みんな同意見です。そこで、労働組合を作って、何事もお情けをかけていただくのではなく、当然の権利として主張しょうじゃないかとてうことに意見の一致を見ました。
 組合の結成も型どおりすませ、団体交渉をすることになりましたが、社長は相当の狸親父で一筋縄ではいきそうもないので、知り合いの、某労働組合の委員長であるC君に応援を頼み、団体交渉の席上に出てもらいました。
 ところが社長は、これは会社内部の問題であるから、外部の者とは話ができない、といって団交の席を立ってしまいました。

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 日本の労働組合は、いわゆる社内組合といって、企業毎に労働組合が結成されているのがほとんどです。○○工業労働組合もその例外ではありません。
 したがって、社長が外部の者と話合ってもしかたがない、というのは一応もっともです。
 外部の者が、団体交渉に加わることは、使用者としては、経営の機密保持、交渉の円滑などを期しえないという気持が強く、これをあまり喜ばない傾向にありますが、いちがいに部外者といっても、○○工業労働組合の上部団体の者と全然組合とは関係のない者との団交とは、性質がちがうので、これを区別して考えなければなりません。
 ○○工業労働組合が、どこかの上部団体に加盟しており、C君がその役員もかねているときは、C君は、○○工業労働組合の代表者といえるわけだから、団交拒否は、労働組合法七条二号の「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」になり、不当労働行為になります。
 しかし、C君が、単に友好組合の代表者であるに過ぎないときは、団交拒否をされても仕方がありません。どうしてもC君に発言してもらいたければ、○○工業労働組合の代理人に選任して、代理人として発言してもらえばよい。
 会社の方では、組合と、第三者委任を禁止するような協約を結んでいないかぎり、団交拒否はできないのです。
 したがって、中小企業の労働組合では会社との労働協約によって、「組合および会社は交渉権限を第三者に委任じないこと」という条項をとりきめ、委任という形で、上部団体の者や組合に関係のない労働戦術家を団交からしめだす傾向にあります。しかし、この約束があっても、上部団体が、それ自身でもっている固有の交渉権を防ぐことはできないので、あらたに前掲のとりきめを上部団体との間に結ぶほかありません。

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