倒産会社の未払賃金はどうなるか

 A君は、○○電機株式会社という電気部品メーカーの従業員です。賃金もあまり良くはないが悪くもない平均的会社で、従業員の数も五、六〇人の家族的会社であり、気分よく働いていました。ところが、会社が、最近になって大口の不渡手形をつかまされ、一ぺんに、業態がおかしくなりました。A君を始めほかの従業員も、賃金が遅れてもいいから、材料の仕入を先にしろ、と協力的に六か月程働いたが、万事休すで、会社財産は譲渡し、それを分配して、会社は解散ときまりました。債権者集会で内整理の方針が打出されましたが、それによると、三ヵ月分の未払賃金は俺の会社債権者と同じく、比例配分で配当し配当率も二割ぐらいといいます。A君らは、会社の立直りのためには賃金遅延も何のそのと働いたのに、結果的には二か月分以上ただ働きをしたことになるので、何とも割り切れない気持である。従業員の賃金は、他の債権者とは違う取扱いにはならないものでしょうか。

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 経済的弱者である労働者を保護することは、取引上の債権者を保護することよりも重要です。また、取引関係者は通常その取引から利潤を受けているので、前にだいぶ儲けさしてもらっているから回収できなくとも、ある程度のあきらめ はつきます。
 また、大口債権者や取引先は、それに見合う担保をとっているのが実情であるので、割合落着いていられます。
 ところが、労働者は、労務を提供してその対価である賃金で生活しているのだから、そうはいきません。そこで民法では、六か月分の給料に対して、一般の債権者よりも優先権を認めています。
 また商法では、「身元保証金ノ返還ヲ目的トスル債権其ノ他会社ト使用人斗ノル者会社ノ総財産ノ上二先取特権ヲ有ス」と規定して、給料のみならず、身元保証金や、退職金などにも先取特権を認め、一般債権者よりも優先権を確保し、また、民法上の六か月というような制限の枠をはずしてしまっています。
 したがって、会社の債権者集会で、従業員の三か月分の未払給与は、他の会社債権者と同じく、比例配分で配当するととになったから、その配当率は三か月分の給与の二割だと決議したところで、そうは問屋がおろさず、これらの法律によって、A君達は、未払賃金三か月分を他の会社債権者より先に全額請求できるわけです。
 どうしても支払わないときは、破産宜告の申立てをするとよい。破産法上でも雇人給料の先取特権や、会社使用人の先取特権には優先権を認められているからです。また、会社更生法でも優先権を認めています。
 さらに、労災保険の適用事業に該当する事業を一年以上行なっている事業主が破産したときなどは、労働者の請求で未払賃金を政府が立替払いしてくれます。

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